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    第22条 人工知能戦略本部長

    条文原文

    (人工知能戦略本部長)
    第二十二条
     本部の長は、人工知能戦略本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
     本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

    概要

    本条は、人工知能戦略本部(以下「本部」という。)の長である「人工知能戦略本部長」を内閣総理大臣と定め、その権限として本部の事務の総括及び所部職員の指揮監督を規定するものである。
    AI推進法に基づく施策の総合性と実効性を確保するために、最高権力者たる総理を本部長と位置づけ、政治的リーダーシップを法的に担保している点に特徴がある。

    解説

    一 本部長の位置づけ

    本条により、本部長は内閣総理大臣とされている。これは、AI推進法に基づく施策が科学技術政策やデジタル政策にとどまらず、経済・安全保障・国民生活など幅広い領域に影響を及ぼすものであることを前提に、最も強力な調整権限を持つ総理が直接責任を負う構造を明確化したものと理解できる。
    同様の立法形式は、IT基本法に基づくIT戦略本部や、気候変動対策関連の会議体においても採用されてきた。AI推進法においても、内閣に置かれる組織(第19条)である以上、総理を本部長に据えるのは必然的な設計である。

    二 権限の範囲

    第2項において「本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する」と規定されている。これは内閣法における主任大臣の一般的な権限を明文化したものであり、第27条で「主任の大臣」を内閣総理大臣とする規定と整合する。
    したがって、本部長は単に象徴的存在ではなく、実質的に本部全体を指揮統括する権限を有する。特に、人工知能基本計画の閣議決定手続(第18条第3項)や重要施策の総合調整(第20条第2号)において、総理が最終的な決定権を持つ点は企業法務にとっても注視すべきポイントである。

    三 他条文との関係

    第22条は、本部の組織に関する中核的規定であり、第21条(組織)、第23条(副本部長)、第24条(本部員)と体系的に関連する。
    特に第23条では、副本部長を内閣官房長官及び人工知能戦略担当大臣と定めており、本部長を補佐する体制を整えている。これは総理の権限集中を前提としつつ、実務遂行において分担を可能にする仕組みである。

    また、第26条において「事務は内閣府で処理する」と規定されていることから、形式的には内閣府の事務局を通じて職員を指揮監督することになる。この点は、「内閣に設置」ではなく「内閣に置かれる」組織であることを理解するうえで重要である。

    四 企業法務への実務的影響

    企業法務担当者の視点からすると、本条の意味は二つある。

    (一)政策決定の最終責任者が総理であることを明示しているため、AI推進に関する国家方針は省庁間調整に左右されにくく、政治判断が優先されやすい。したがって、企業の規制対応や政策提言活動においては、所管省庁への対応だけでなく、官邸レベルの動向を常にモニタリングする必要がある。

    (二)総理が本部長を務めることで、AI関連施策が国家戦略として扱われることが明らかである。企業のコンプライアンスやガバナンス体制を設計する際には、AI基本計画(第18条)で示される方向性が、単なる行政指針にとどまらず、政治的意思に基づく拘束力を持つことを踏まえる必要がある。特に、適正性確保(第13条)、人材育成(第14条)、国際協力(第17条)など各条文で規定された基本施策は、総理主導で一体的に推進される可能性が高い。

    まとめ

    第22条は、本部長を内閣総理大臣と定め、AI戦略を国家的課題として最高位の政治的リーダーシップの下で推進することを明確化した規定である。
    企業にとっては、AI推進に関する規制や施策が単なる行政運用にとどまらず、首相主導の政策パッケージとして展開されることを意味する。したがって、規制対応や政策渉外活動においては、省庁だけでなく官邸レベルの動向を注視し、企業戦略に反映させることが求められる。