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    第17条 – 国際協力

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    条文原文

    (国際協力)
    第十七条
     国は、人工知能関連技術の研究開発及び活用に関する国際協力を推進するとともに、国際的な規範の策定に積極的に参画するものとする。

    概要

    本条は、人工知能関連技術に関する国際協力の推進と、国際規範策定への参画という二つの柱から構成されており、AI推進法における対外的施策の基本方針を定める条項である。AI技術が国境を越えて社会や経済に影響を及ぼすことに鑑み、日本政府が国際的な連携と主導権の確保を同時に目指す姿勢を明文化している。

    解説

    一 国際協力の意義と背景

    (一)グローバル技術に対する制度的応答

    AI技術は、クラウド基盤や大規模言語モデルのように国際的なインフラの上に構築されており、技術の普及・利用は国家の枠を越えて進行している。そのため、一国単独の法制度では規律しきれないリスクが存在する。たとえば、ディープフェイク、アルゴリズムバイアス、越境データ処理等は、共通の国際的対応が求められる領域である。

    本条は、こうした背景を踏まえて、国が国際的な協力体制を構築・強化する責務を負うことを明示しており、AI推進政策の多国間的側面に初めて法的根拠を与える規定である。

    (二)基本理念との関係

    本条の内容は、第3条第5項に定められた国際的協調の理念と一体をなすものである。すなわち、本条は第3条の理念規定を具体化した実施条項であり、理念から施策への展開の中間地点として位置付けられる。
    第3条第5項では、人工知能関連技術の研究開発及び活用は「我が国及び国際社会の平和と発展に寄与するものとなるよう、国際的協調の下に推進することを旨とする」とされており、第17条はその理念に基づき、国の積極的な参画を義務付けている。

    二 他条文との体系的連関

    (一)第13条「適正性の確保」との補完関係

    第13条では、「国際的な規範の趣旨に即した指針の整備」が国の施策として明記されているが、その前提として、本条により我が国がその国際的規範の策定段階において関与することが求められる。
    つまり、第13条が国内ガイドラインや運用基準への反映を規定するのに対し、第17条はその上位概念である国際規範の形成への参加を担保するものであり、両者は制度的に補完関係にある。

    (二)第18条「人工知能基本計画」との反映関係

    本条に基づく国際協力の取組は、政府が策定する「人工知能基本計画」(第18条)の内容に具体的に反映されることが予定されている。特に、第18条第2項第2号は、政府が「総合的かつ計画的に講ずべき施策」を明記することを求めており、ここに国際的な連携・合意形成の方針が組み込まれることで、実効性のある対外戦略が担保される。

    三 実務上の影響

    (一)企業における規範対応の必要性

    本条により、日本の法制度は今後、国際的に共有された価値観・倫理原則に沿って運用されることが見込まれる。具体的には、OECDのAI原則、G7によるAI行動規範、EUのAI法(AI Act)などの内容が、国内のガイドラインや監督制度の基準となる可能性が高い。
    企業法務としては、日本国内で完結する法規制だけでなく、国際的な規範に準拠したリスクマネジメントの必要性が増しており、以下のような対応が求められる。

    • 自社のAI活用方針が、国際的な倫理原則(公平性、説明責任、安全性など)と整合することの確認
    • 海外拠点やパートナーとの契約における、各国AI規制への準拠条項の明文化
    • 将来的な監督機関や第三者評価制度(AI監査)への対応準備

    (二)共同研究・国際連携の実務促進

    本条は、国が国際的な研究プロジェクトや標準化活動に参加する土台を提供するものであり、企業や大学等にとっては、国際プロジェクトへの参画が促進される機会でもある。たとえば、データガバナンスに関する国際的な実証事業や、AI倫理認証制度の試験導入など、法制度と研究開発が並行して国際化していく局面が想定される。

    まとめ

    第17条は、AI推進法における国際的文脈の要となる規定であり、国際社会との協調・連携の中で日本のプレゼンスを確保するための指針である。
    第3条の理念と第13条の規範整備、第18条の計画策定と結びつく形で、対内・対外施策の架橋的役割を果たしている点に特色がある。

    企業実務においては、本条の趣旨を踏まえ、国際的なAI規範・標準への対応と先取りが求められる。
    また、国際共同研究や官民連携のプロジェクトへの積極的な関与は、単なるコンプライアンスの枠を超えた競争戦略の一環となることに留意すべきである。

    今後、人工知能戦略本部(第19条以下)の活動や、人工知能基本計画の具体化においても、本条の果たす役割は一層重要性を増すものと考えられる。