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    第11条 – 研究開発の推進等

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    条文原文

    (研究開発の推進等)
    第十一条
     国は、人工知能関連技術の基礎研究から実用化のための研究開発に至るまでの一貫した研究開発の推進、研究開発機関における研究開発の成果の移転のための体制の整備、研究開発の成果に係る情報の提供その他の施策を講ずるものとする。

    概要

    第11条は、第二章「基本的施策」の起点として、人工知能関連技術の研究開発を国の中心的施策として位置付ける規定である。基礎研究から応用・実用化に至る「一貫性のある推進」を国の責務として明示するとともに、研究開発成果の社会への移転や情報提供の仕組みの整備までを包括的に規定する。本条は、第12条以下の各施策(施設整備、人材育成、教育、国際協力など)を方向付ける基幹条項として理解されるべきである。

    解説

    一 法律体系における位置付け

    本条は、総則部分(第1条から第10条)で示された基本理念(第3条)や国の責務(第4条)を受けて、第二章の個別施策の第一に掲げられている。すなわち、AI推進法がまず着目するのは研究開発であり、他の施策(第12条の施設整備、第14条の人材確保、第16条の調査研究等)はすべてこの研究開発推進を補完するものである。本条はAI推進政策の中核であり、以後の条項群の「母規定」といえる。

    二 一貫した研究開発の推進

    条文は「基礎研究から実用化のための研究開発に至るまでの一貫した研究開発の推進」と規定する。これは、研究開発の各フェーズ(基礎研究・応用研究・実証・実用化)を分断することなく、シームレスに進展させる体制を整えることを要請している。背景には、AI技術が急速に進化し、基礎研究の成果が短期間で産業利用に直結するという特性がある。
    また、第3条第3項は「基礎研究から国民生活及び経済活動における活用に至るまでの各段階の関係者による取組の密接な関連性」を基本理念として掲げている。本条はこの理念を具体化した条項である。

    三 成果移転の体制整備

    研究開発の成果が学術領域にとどまらず、産業や行政に適切に移転されることは政策的に極めて重要である。条文は「研究開発機関における研究開発の成果の移転のための体制の整備」を国の施策として定めている。これは、いわゆる「技術移転機関(TLO)」や「産学官連携の仕組み」の強化を想定していると解される。第6条が研究開発機関の責務として「成果の普及」を掲げている点とも密接に関連する。国の側はそれを制度的に後押しする責務を負う。

    四 情報提供の施策

    本条はさらに「研究開発の成果に係る情報の提供」を明示する。AI研究は国際的なオープンサイエンスの潮流の中にあり、成果情報の透明性確保は重要課題である。他方で、国家安全保障や知的財産権の観点から情報公開には一定の制約が必要であり、第13条の「適正性の確保」との均衡が問題となる。情報提供をめぐる施策は、透明性と安全性との調和をいかに取るかが実務的焦点となろう。

    五 他条文との関係

    • 第12条は研究に必要な施設・データ基盤の整備を規定しており、本条が対象とする研究開発の物的基盤を支える。
    • 第14条の人材確保は、研究開発を担う人材を制度的に支援する条項であり、本条と密接に結び付いている。
    • 第16条は研究成果や不適切利用の事例を調査・分析するものであり、研究開発の適切な方向付けに資する。
      このように、第11条は第二章の他条項と有機的に連関し、全体の起点として機能する。

    六 企業法務実務への影響

    企業法務担当者にとって、本条の意義は次の点にある。
    (一)国が研究開発の推進と成果移転の体制整備を責務とする以上、企業は大学や研究機関との共同研究や成果利用において、国の支援制度を積極的に活用しうる。契約実務においては、知財の帰属や成果公開の範囲について、国の方針に即した条項整備が必要となる。
    (二)情報提供施策は、企業の研究成果の公開・共有を求める方向に作用する可能性があり、秘密保持や競争優位性の確保とどのように調和させるかが課題となる。適切な情報管理体制の構築が求められる。
    (三)研究成果の移転を促す施策は、大学等とのライセンス契約や共同事業化に直結する。企業は、知財戦略と法務戦略を一体で検討する必要がある。

    まとめ

    第11条は、AI推進法における基本的施策の出発点として、研究開発を一貫して推進する国の責務を規定している。その内容は、基礎研究から実用化までの継続的支援、成果移転の制度整備、成果情報の提供を包含し、第3条の基本理念を具体化するものである。企業法務の観点からは、研究成果の公開・移転に伴う知財管理や契約実務が大きな課題となり、国の施策を踏まえた戦略的対応が不可欠である。本条は、AI時代における産学官連携の法的基盤を示す条項として理解することが適切である。