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    第23条 – 人工知能戦略副本部長

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    条文原文

    (人工知能戦略副本部長)
    第二十三条
     本部に、人工知能戦略副本部長(次項及び次条第二項において「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官及び人工知能戦略担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、人工知能関連技術の研究開発及び活用の総合的かつ計画的な推進に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。)をもって充てる。
     副本部長は、本部長の職務を助ける。

    概要

    第23条は、人工知能戦略本部における副本部長の設置とその役割を規定している。本条により、副本部長は内閣官房長官および人工知能戦略担当大臣が充てられることが明確化され、総理大臣を本部長とする強力な体制を補完する位置づけが与えられている。副本部長の役割は、本部長を補佐し、人工知能関連技術の研究開発・活用推進の総合調整を実効的に行う点にある。

    解説

    一 位置づけ

    人工知能戦略本部の組織規定は、第21条から第24条にかけて整然と配置されている。第21条で組織の基本構成(本部長、副本部長、本部員)を示し、第22条で本部長=内閣総理大臣と定め、第23条で副本部長を設け、第24条で全閣僚を本部員とする枠組みである。この流れにおいて、第23条は本部長の権限を補完するための中核的条文である。

    二 人事の固定化

    副本部長に充てられる人物は、内閣官房長官と人工知能戦略担当大臣に限定されている。これは、政治上の二重の意義を持つ。
    (一)内閣官房長官は、内閣の事務を総括し、内閣全体の調整を担う立場にある。AI政策が縦割りを超えた調整を必要とする以上、官房長官の関与は不可欠である。
    (二)人工知能戦略担当大臣は、本法第22条2項にあるように、総理大臣を助ける特命を担う大臣であり、専門性・政策遂行力を確保する機能を果たす。

    この二者を副本部長に固定することにより、AI政策の調整権限と専門性の双方を制度的に保障しているといえる。

    三 本部長との関係

    副本部長の役割は「本部長の職務を助ける」と簡潔に定められているが、これは単なる事務補助ではなく、政治的・実務的に極めて広範な補佐権限を意味する。特に次の二点が重要である。

    (一)総理の多忙さを前提にした 代行的機能
    AI政策は横断的かつ専門的であり、総理自らが常時意思決定を行うことは現実的でない。副本部長は、総理に代わって審議や調整を主導する事実上の司令塔として機能することになる。

    (二)本部員(全閣僚)との調整機能
    第24条により全ての国務大臣が本部員とされるため、会議体としての本部は極めて大規模となる。この調整を円滑に行うには、官房長官の調整力と担当大臣の専門的視点が不可欠である。

    四 他条文との関係

    本条の理解は、第20条(所掌事務)及び第18条(人工知能基本計画)と密接に関連する。すなわち、副本部長は基本計画案の策定や重要施策の総合調整を担う実働部隊の中核をなす。本部長が最終的権限を保持しつつも、副本部長が調整を主導する構造が実務上の前提となる。

    また、第26条(事務は内閣府で処理)との関係も重要である。副本部長は、内閣府の事務局機能を直接指揮することで、政策の実装力を担保する位置にある。

    五 企業法務への示唆

    企業法務担当者にとって、本条の意義は二点に集約される。

    (一)政策決定経路の可視化
    AI推進法に基づく基本計画や規制方針は、副本部長(特に担当大臣)の関与を経て形成されることが多い。企業としては、単に総理大臣発表のみならず、副本部長の発言・記者会見・政策文書を継続的にフォローする必要がある。

    (二)ロビイング戦略の焦点化
    実務上、企業がAI政策に影響を及ぼそうとする場合、副本部長周辺の政策形成過程にアクセスすることが最も効率的である。官房長官ルートは調整力、担当大臣ルートは専門性に基づく政策提案窓口として、それぞれ異なる性格を持つため、両者を使い分けたアプローチが望ましい。

    まとめ

    第23条は、人工知能戦略本部の実効性を担保する補佐体制を制度化した規定である。本部長=総理大臣の権威と、副本部長=官房長官・担当大臣の調整力・専門性が組み合わされることで、縦割り行政を乗り越えた政策実行力を確保する狙いがある。企業法務においては、副本部長を政策形成の「実働の中枢」として理解し、情報収集や政策対応戦略に反映させることが肝要である。