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概要
附則第1条は、AI推進法の施行時期を定めるものである。本法の施行は原則として公布日とされるが、第3章(人工知能基本計画)及び第4章(人工知能戦略本部)は、公布日から三月を超えない範囲内で政令により施行日が別途定められる。
第1章、第2章の施行日は、公布日である2025年6月4日であり、
第3章、第4章の施行日は、施行期日政令により2025年9月1日となる。
条文原文
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第三章及び第四章並びに附則第三条及び第四条の規定は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
解説
一 規定の趣旨
本法附則第1条は、法律の発効日を定めるいわば「法の入口」に関する条項である。AI推進法は、急速な技術革新に対応しつつ、国の施策を統合的かつ計画的に進めることを目的として制定されたものであるが、その施策を担う制度的枠組み、すなわち「人工知能基本計画」(第3章)および「人工知能戦略本部」(第4章)は、制度設計や組織準備が必要となることから、公布と同時ではなく、猶予期間を設けた上での施行とされている。条文構造全体を踏まえた制度整備の順序に配慮した結果であるといえる。
二 規定の具体的内容
本法の第3章では、政府が「人工知能基本計画」を策定することが規定されている(第18条)。この計画は、前章(第2章)の基本的施策を踏まえて作成されるとされており、その施策内容には、研究開発の推進(第11条)、施設整備(第12条)、適正性の確保(第13条)、人材確保(第14条)などが包括されている。
また、第4章の人工知能戦略本部(第19条以下)は、人工知能基本計画の「案の作成」およびその「実施の推進」を所掌事務としている(第20条)。よって、第3章と第4章は制度上も施行日上も一体として取り扱う必要があり、附則第1条であえて併記されているのは、この構造的連動性に基づいている。
三 規定の実務的意義
企業法務担当者にとって、附則第1条の理解は、特に次の二点で実務上重要である。
第一に、基本計画および戦略本部の発足が、補助金や助成制度、規制ガイドライン、倫理指針等の公的情報の発出や変更のタイミングと密接に関連することである。附則第1条に基づき施行日政令が制定されて2025年9月1日が第3章第4章の施行日として確定したが、今後も制度上の動きに注視する必要がある。
第二に、企業が今後受ける規制的影響や支援措置が、基本計画によって定められるため、施行日とあわせて基本計画の具体的な内容にも敏感に反応することが求められる。特に、技術開発の方向性や倫理基準に関する記述が、自社製品やサービスの将来設計に影響を与える可能性がある。
この点、附則第2条(検討)とも関係する。すなわち、本法の制度は今後の国際的動向や社会経済状況の変化に応じて見直される可能性があり、附則第1条の施行の弾力性は、このような将来の制度調整を見越した布石とも理解できる。
まとめ
本条及び、施行日政令によって、AI推進法の施行日は、以下のとおりとなる。
- 第1章(総則)、第2章(基本的施策):2025年6月4日
- 第3章(AI基本計画)、第4章(AI戦略本部):2025年9月1日
附則第1条は、本法の施行日を定めると同時に、第3章(人工知能基本計画)および第4章(人工知能戦略本部)の施行に猶予を設けることで、制度の段階的な整備を可能とするものである。この条文は一見すると形式的だが、法律全体の制度運用と密接に関係しており、企業を含む実務担当者にとっては、今後の法的枠組みや政策動向を見極める上で重要な出発点となる。
なお、AI推進法は、今後の技術的・国際的動向に応じて制度変更がなされる可能性があることから、本条と附則第2条(検討)を併せて読み解き、常に最新の政令・計画公表に目を配ることが重要である。
慶應義塾大学大学院博士課程を経て、大学の常勤研究員として「法律エキスパートシステム」(旧世代AIによる法的推論支援)の研究に従事。その後、国会議員の政策担当秘書として、制度設計や立法の実務に携わる。現在は、公共政策の知見を活かした予防法務サービスを展開している。
著書:『10分でサクッとわかるAI推進法』