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    第5条 – 地方公共団体の責務

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    条文原文

    (地方公共団体の責務)
    第五条
     地方公共団体は、基本理念にのっとり、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関し、国との適切な役割分担の下、地方公共団体が実施すべき施策として、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

    概要

    本条は、AI推進における地方公共団体の役割と責務を定めたものである。AI関連施策は、国が一律に主導するのではなく、地域の特性を踏まえた多様な展開が求められており、本条はその法的根拠となる。地方自治体に対して「責務」という形で努力義務を課し、国との適切な役割分担の下での自主的施策を促している点が重要である。

    解説

    本条は、第3条の基本理念に基づき、AI施策の推進主体として地方公共団体の位置づけを明示している。

    まず、「基本理念にのっとり」とある点については、第3条に定められた5つの理念(技術的基盤性・計画的推進・透明性の確保・国際協調等)が、地方施策の策定にも当然適用されるという宣言的意味合いを持つ。AI施策は一部の自治体だけでなく、全国の地方自治体での整合性・一貫性が求められるため、共通の価値基盤を持つことが意図されている。

    次に、「国との適切な役割分担の下」との文言は、第4条で国の責務として示された「総合的かつ計画的な施策」の策定・実施との調和を求めるものである。つまり、地方公共団体が独自にAI施策を進める場合でも、国の方針(例:第18条の基本計画)との齟齬があってはならない。これは、AIという技術分野が国際競争や安全保障にも関係するという本法の前提(第3条第2項)に基づく統一的政策運営を確保する趣旨と整合的である。

    また、「その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策」とある点において、単なる受動的な政策実施主体としてではなく、地域に即した創意ある施策立案主体としての能動的な役割が期待されている。例えば、過疎地域では公共交通や高齢者支援へのAI活用、都市部では行政手続の効率化やスマートシティ施策など、自治体によって重点が異なる。

    この「責務」は、法的には努力義務に分類されると解されるが、本条の文脈上、単なる努力義務にとどまらず、一定の政策的実施責任が付随するという意味での「ソフト・ロー的拘束力」を持つと考えるべきである。

    さらに、本条は第6条第7条との関係においても重要である。第6条では研究開発機関、第七条では活用事業者の責務が定められており、これらのアクターとの連携を地方公共団体が積極的に担うべきことが、本法全体の構造から導かれる。第9条はこうした関係主体間の「連携の強化」を規定しており、本条との相乗的機能が期待される。

    実務的には、地方公共団体がどのような政策をとるべきかについては、国が策定する「人工知能基本計画」(第18条)との整合性が重要であり、地方版AI計画の策定・予算化・民間連携といった課題が想定される。また、自治体によるAI実装の事例(チャットボット導入や業務効率化など)はすでに全国各地で蓄積されつつあり、今後はそれらを横展開・共有するための施策基盤整備が求められるであろう。

    まとめ

    第5条は、地方公共団体がAI推進において受動的に国の施策を受け取るだけでなく、自主的・地域特性に応じた施策を講じるべきであることを明示している。本条の位置づけは、国と地方の役割分担にバランスを持たせつつ、全国的なAI利活用の裾野拡大を狙う本法の全体構造と密接に結びついている。特に、他のアクター(研究機関・民間・国民)との連携の起点として、地方自治体の果たすべき役割は今後ますます大きくなると考えられる。