コンテンツへスキップ
    ホーム » 第18条 – 人工知能基本計画

    第18条 – 人工知能基本計画

    AI推進法まとめページはこちら

    【条文】

    第十八条 政府は、基本理念にのっとり、前章に定める基本的施策を踏まえ、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する基本的な計画(以下「人工知能基本計画」という。)を定めるものとする。
     人工知能基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
    一 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策についての基本的な方針
    二 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
    三 前二号に掲げるもののほか、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策を政府が総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
     内閣総理大臣は、人工知能戦略本部の作成した人工知能基本計画の案について閣議の決定を求めるものとする。
     内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、遅滞なく、人工知能基本計画を公表するものとする。
     前二項の規定は、人工知能基本計画の変更について準用する。

    【概要】

    本条は、政府が策定すべき「人工知能基本計画」について規定するものである。AI推進法に基づく政策の中核を成す計画であり、同法第二章に掲げられた基本的施策を具体化し、全体としての戦略的整合性を確保する役割を担う。計画の策定権限は政府にあり、実質的には人工知能戦略本部によって案が作成され、内閣総理大臣を通じて閣議決定される構造となっている。変更についても同様の手続きを準用することで、継続的な見直しと透明性の確保が図られている。

    【解説】

    本条は、AI推進法の中でも、政策の実行力と統合力を制度的に担保する中核的規定である。全体構造上、第一章で示された「基本理念」(第3条)と、第二章の「基本的施策」(第11条から第17条)を橋渡しするものであり、後続の第四章「人工知能戦略本部」(第19条以下)と連動して、制度運用の具体的土台を形成する。

    一 「政府は…人工知能基本計画を定めるものとする」

    これは、いわゆる義務的規定であり、策定が単なる努力義務にとどまらないことを意味している。第3条の基本理念にのっとり、かつ第11条以下の基本施策を踏まえて計画が策定されるため、これらの規定の趣旨に合致した内容でなければならない。

    とりわけ、第13条の「適正性の確保」、第14条の「人材の確保等」、第16条の「調査研究等」など、動態的・社会的影響の強い施策との整合性が極めて重要である。

    二 「人工知能基本計画は…定めるものとする」

    第二項各号に列挙された三つの事項は、いずれも政策的な中核事項であり、企業実務にも大きな影響を及ぼす。

    • 一号の「基本的な方針」は、AI関連技術の公的支援の方向性を明らかにするものであり、研究助成・認証制度・ガイドラインの整備等に関わる企業にとっては、事業計画策定において参照すべきものとなり得る。
    • 二号の「総合的かつ計画的に講ずべき施策」は、予算措置・インフラ整備・産学官連携の体制など、実行段階での政府の関与を具体化する部分であり、企業法務としても行政対応の指針となる。
    • 三号の「その他の必要な事項」は、計画の柔軟性と網羅性を担保するための包括規定であり、国際協力(第17条)や規範策定(第13条)といった新たな領域を含みうることに注意が必要である。

    三 「閣議決定と公表の手続」

    第3項と第4項では、人工知能基本計画が閣議決定を経て公表される旨が規定されており、透明性と行政計画の正統性を担保している。企業側は、この公開された基本計画に基づき、中長期的なAI関連施策への対応方針を組み立てることが可能となる。

    また、第5項により、計画の「変更」についても同様の手続を準用することが明記されており、政府の戦略的柔軟性を制度的に支える一方で、企業や研究機関にとっては計画変更のリスクとそれに伴うモニタリング体制の必要性が生じる。

    四 他条文との関係性

    本条の実施主体たる「人工知能戦略本部」(第19条以下)は、実際に計画案を作成する役割を担う(第20条第1号)。また、本部の構成は全閣僚を本部員とする政府横断体制であり(第24条)、策定される計画は全省庁的な効力をもつ。この点で、本計画は単なる内閣府内の施策にとどまらず、各省庁の業務計画や予算編成にも直結する。

    加えて、第10条の「法制上の措置等」と密接に関連しており、計画に基づいて法令改正や財政措置が講じられることも想定される。企業法務担当者にとっては、単なる行政計画というより、制度改革の根拠資料と位置づけるべき条文である。

    【まとめ】

    第18条は、AI推進法における政策実現の中核となる「人工知能基本計画」の法的根拠を定めた規定である。同計画は、基本理念及び基本的施策を踏まえたものでなければならず、その策定手続には戦略本部による案の作成、内閣総理大臣による閣議決定、公表、変更の準用という流れが定められている。企業にとっては、国のAI政策の方向性を把握するための最重要資料となり、実務面では規制対応、研究投資、リスク評価など多方面に影響する。

    本条の理解は、単に行政の内部文書としての計画策定にとどまらず、AIを活用するすべてのプレイヤーが政策環境の変化を予測し、適切な対応策を講じるための土台となる。したがって、企業法務担当者においては、本計画の動向を定期的にチェックし、条文構造と施策動向を照らし合わせて実務へ反映させることが強く推奨される。